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テキスト ボックス: 国語科の教科構造

  1.目  標
(1)総括目標
  国語を正確に理解し表現する能力を養うとともに,国語に対する関心を深め,
 言語感覚を養い,国語を尊重する態度を育てる。
(2)具体目標
 @ 文字,発音,単語(語彙),文法,文,文章,段落などについての知識を正
  確に豊富にし,読む力,書く力,話す力,聞く力などの諸能力を伸ばす。
 A 国語による理解と表現を通して正しい知識を身につけ,豊かなものの見方,
  考え方,感じ方を養う。
 B 言語による伝達を通じて相互に理解しあい深めながら,社会生活を高める能
  力と態度を育てる。
 C わが国のことばである日本語についての自覚をうながす過程で,日本語を大
  切にする態度を育てる。

  2,学年目標
(1)第1学年
 @ 経験した事,身近な事柄などについて,簡単な文章を書いたり,話をしたり
  することができるようにするとともに,進んで表現しようとする態度を育てる。
 A 書かれている事柄の大体を理解しながら文章を読んだり,粗筋をつかみなが
  ら話を聞いたりすることができるようにするとともに,易しい読み物を楽しん
  で読もうとする態度を育てる。
(2)第2学年
 @ 事柄の順序をはっきりさせて文章を書いたり,話をしたりすることができる
  ようにするとともに,正しく表現しようとする態度を育てる。
 A 事柄の順序や場面の様子の移り変わりを中心にして内容を理解しながら,文
  章を読んだり,話を聞いたりすることができるようにするとともに,易しい読
  み物を進んで読もうとする意欲を高める。
(3)第3学年
 @ 文章や話の要点が分かるように,事柄ごとにまとまりのある簡単な構成の文
  章を書いたり,話をしたりすることができるようにするとともに,分かりやす
  く表現しようとする態度を育てる。





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テキスト ボックス:  A 内容の要点を正しく理解しながら,文章を読んだり,話を聞いたりすること
  ができるようにするとともに,いろいろな読み物を読もうとする態度を育てる。
(4)第4学年
 @ 表現する内容の中心点がはっきりと分かるように,段落ごとの構成,段落相
  互の関係などを考えて文章を書いたり,意味のまとまりごとの区切り,軽重な
  どを考えて話をしたりすることができるようにするとともに,内容を整理しな
  がら表現しようとする態度を育てる。
 A 段落ごとの内容の要点相互の関係や内容の中心点を把握しながら叙述に即し
  て正確に文章を読んだり,話の要点や中心点を正確に理解しながら聞いたりす
  ることができるようにするとともに,読書の範囲を広げるようにする。
(5)第5学年
 @ 主題や要旨のはっきりした表現をするため,全体の構成を考えて文章を書い
  たり,筋道を立てて話をしたりすることができるようにするとともに,相手や
  場面の状況を考えて表現しようとする態度を育てる。
 A 主題や要旨を理解しながら,文章を読んだり,話を聞いたりすることができ
  るようにするとともに,読書を通して知識を増し心情を豊かにする。
(6)第6学年
 @ 表現しようとする目的や内容にふさわしい文章を書いたり,話をしたりする
  ことができるようとするとともに,的確で効果的な表現をしようとする態度を
  育てる。
 A 読む目的や文章の種類・形態などに応じた適切な読み方で文章を読んだり,
  目的に応じて効果的に話を聞いたりすることができるようにするとともに,適
  切な読み物を選んで読む習慣をつける。

  3.指導計画作成上の留意点
(1)学習活動の組織にあたっては,学年の発達段階に応ずる適切な言語活動を選ぶ。
(2)各指導事項はそれぞれの学年の基準を前後の学年の内容等とかかわらせること
   によって,系統的・発展的な指導を行う。
(3)表現力と理解力の適切な育成のため,その関連的指導を工夫する。
(4)文章表現力の育成と思考力の向上に重点を置いた作文指導を工夫する。作文を
    主とする指導には,各学年とも国語科総時数の10分の3程度をあてる。
(5)人間形成上欠かせない読書活動の活発化を学校教育全体とも関連させ工夫する。
(6)作文及び書写の指導にあたっては特設にしても差し支えない。
                  



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テキスト ボックス:     U 読解指導の意義と任務

  1.読解指導の意義
 国語科教育は,日本語そのものについての科学的理解の「言語の教育(言語事項
的)」の分野と「言語活動の教育(読み方や書き綴り方)」の分野の2つに分ける
ことができる。
 中でも,言語活動の教育はその内容と方法において,文学や自然科学・社会科学
教育等の基礎段階としての一翼をになうといえる。それ故,教材の選定や言語活動
の教育を通してのものの見方,感じ方,考え方の育成は,国語教育としてはもちろ
んのこと全教育活動の基礎としても重要な意味をもつ。
 言語活動の教育としてのひとつである「読解」は,言語によって書きだされた人
間や社会・自然等やその関係を「読む」という活動や作業を通して客観的に認知認
識していくことであるといえる。それ故,当然この中には,子どもたちの人格形成
という大きな課題が含まれている。
 また,子どもたち自身が「読解指導」の積み上げの中で,どのように読めば客観
的な認知認識が可能となるかという読解の方法=読み方=を会得することでもある。
このことは文学(芸術)教育更には豊かな思想構築のための基礎となるものであり,
やはり人格形成という大きな課題を含むものであるといえる。

  2,読解指導の任務
 読解指導は大きく分けると文学的文章と説明的文章の読解のふたつになるが,そ
の任務は,
(1)文章の内容を理解するという読み方(言語活動)の指導
 ・すぐれた文章を子どもに与え,その意味を理解させ,人間や社会,自然等につ
  いての認知認識・理解をひろげ深める。
(2)文章の内容を理解させる過程で,日本語の文字,発音,単語(語彙),文法,
 文,文章,段落などの知識(言語)蓄積の指導
 ・日本語そのものの系統的・科学的な指導を可能とする基礎を固め,発展を図る。
(3)(1)(2)の結果として,文学あるいは自然科学や社会科学等各種の文章を読みとる
 ことによる子どもの認知認識諸能力(観察力・想像力・思考力など)伸長の指導
 ・(1)の狭義の読み方から広義の読み方(文学教育)への発展,あるいは自然科学
  社会科学の土台づくりを図る。
とまとめることができる。このことからもわかるとおり,その任務は子どもたちの
人格(人間)形成につながるものである。



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テキスト ボックス:      V 読解指導の内容と方法
   1. 読解指導の内容
  先の読み方教育の任務を受けて,それらの仕事は次の具体的な内容に結びついて
なされる。
 (1)文字を音声にすることの指導
 (2)文字の書き方の指導
  ※(1)(2)は,その指導過程の中には位置づけられるものの,たとえば新出漢字の指
  導など,読みとりの過程とは別に行われることも多い。
 (3)文章の内容を理解することの指導
  @ 単語の意味の理解(意味や内容,語感,働き,込められた感情)〜「語彙」
   指導も含む
  A 単語の組み合わせの意味の理解
  B 文の意味の理解
   ※ABで学年発達段階をふまえる上で指導されるべき文法的なことについては
    とりたて指導のかたちで行うことが望ましい。
  C 文章の意味の理解
  E 作品(文章全体)の内容の理解〜「主題」や「要旨」の分析把握
  なお,以上の中心的な指導内容に付随して,その前後や過程で行われるものに,
 (1)読みへの興味や関心・態度をよびおこすための指導
 (2)文章の知覚や理解,作品の内容の理解を容易にしたり深めたりするための指導
  (たとえば,辞書の活用やノートの使用,活用など)
 (3)作品から獲得した知識を実際に応用したり,その真実性や現実性を検証する指
  導や仕事
 (4)読みの技術や日本語の定着のための指導や仕事(朗読の工夫や練習など)があ
  る。
  2.読解指導の方法
 先に,「読解」は言語によって書きだされた人間や社会,自然等やその関係を
「読む」という活動や作業を通して客観的に認知認識していくことであると書いた。
 この「読む」という活動や作業は「形象を読む」という言い方をしてもかまわな
い。「形象」とは,簡単にまとめると,
○客観的側面=ことばが指し示しているもの=「絵」
○主観的側面=ことばの表現しようとする感情や評価=「心情・感情・思想」


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テキスト ボックス: とをあわせたものとおさえられる。
 すなわち,読解は読むという活動や作業によって,単語や文,及びその組み合わ
せや関連によって描かれ表現されている作品の世界(客観的側面と主観的側面)を
生き生きとしたイメージとして再生産していく想像過程であり,また,そのまとめ
として文章や作品を理解する思考過程であるといえる。
 読解指導の方法は,詳細は指導過程(段階)を含めて次項「物語文の指導」「説
明文の指導」にゆずるが,ここではそのほとんどを占める語句語法の指導について
その内容と方法をまとめてみる。語句語法指導の内容、と方法は
(1)語句語法指導の内容
 @ 表 記
 A 発 音
 B 語彙的性質・知的意味と感情的意味・語構成的構造「複合・派生・転成・
  略語等」・意味的構造「きる=紙・水・トランプ等」・使用の範囲「幼児語,
  医学用語等」・文体・単語の出どころや語源・群れ「同義語・類義語」)
 C 文法的性質(読解指導の場合,系統的な指導とはなり得ないので,文法的性
  質を事実としてとらえ積み重ねていくことに重きをおいた指導となる)
 E 表現及び表現的価値(比喩「直喩・隠喩」・換喩・誇張・皮肉)
(2)語句語法指導の方法
 @ 単語が名づけている事物やそれらの写真・絵をじかに見せる
 A 単語が名づけている動作や動きを実際にさせてみる
 B くわしく,説明的に意味規定をさせる
 C 語句体系の中で同義語や類義語,反対語や関係語を与える
 E 文脈から意味を推察させる
 E 概念規定をする(三角形=三辺でかこまれた図形)
 F 単語の意味をあらわす具体的な場合をのべたり生活経験や実例をあげさせる
 E 語構成上の分解結合から単語全体の意味を理解する
 H 単語の出どころや語源を説明する
 I 用例を数多く出させる
としてまとめることができる。この場合,「読解指導の中での語句指導は,言語の
教育としての立場からでなく,あくまでもそこに書かれ表現されていることを生き
生きと豊かにイノージ化することを主眼において指導する」という原則をふまえた
いものである(ということは,言語活動の教育の外で,系統的な言語の教育が必要
であるということにもつながる)





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